アリオス株式会社 技術関連

技術関連

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2020.06.04[ プロセス用プラズマ診断ツール ]

プラズマの診断には、目的・対象に応じて様々な方法があります。

プラズマ中で生じる化学反応に着目する場合は、分光(発光強度である程度定量化も可能)が、
プラズマの物性値(密度等)を得る場合は、ラングミュアプローブ(弊社ラングミュアプローブの紹介記事はこちら)が、
プラズマプロセスの処理量を定量的に評価したい場合は、プラズマインジケータ™が、それぞれ適しています。

このうち、弊社では株式会社サクラクレパス様が開発された、プラズマインジケータ™「PLAZMARK®」の 取り扱いを新たに開始いたしましたので、本記事でご紹介したいと思います。

1.仕組み

PLAZMARK®は、特殊な色素を用いたインクを、インジケータ(ラベル、シート、ウエハ等形態は様々)にプリントしたものです(ウエハ型は規格品ウエハの表面に直接色素を成膜)。
このPLAZMARK®をプラズマに晒すと、晒したプラズマの処理量すなわちラジカルやイオンの密度と処理時間の積算値に応じて、色素が反応し、インジケータが変色します。
変色の程度は、反応した色素の量=晒したプラズマの処理量に依存しますので、変色の程度=色差値として数値で示すことで、プラズマ処理の結果を定量的に判断出来るようになります。
(通常、色差を目視で判定することは困難ですので、色差計と呼ばれる計測器が用いられます)

2.種類

PLAZMARK®に用いられる色素は、特定の用途に最適化して反応するように設計されているため、以下のような品種があります。

①Arクリーニング用 ... Ar+やHe+などのイオンに反応します。いわゆる(真空の)プラズマクリーナーはAr+によって処理されています。
②O2クリーニング用 ... O2プラズマで生成するラジカル種に反応します。Air、N2、CF4、H2、NH3等のプラズマでも同様です。
③大気圧プラズマ用 ... 大気圧(低温)プラズマ中のラジカル種に反応するように設計されています。
④デスミア用 ... プラズマデスミア(プリント配線基板製造時のスミア(汚れ)を除去する処理)に最適化されたものです。O2+CF4系ガスでの処理に対応しています。
⑤耐熱性 ... 無機色材とポリイミド基材の組み合わせで200℃まで耐熱性を向上させたものです。
⑥ウエハ型 ... セラミックタイプ:無機色材を用いたウエハです。400℃までの耐熱性を持ちます。
⑥ウエハ型 ... メタルフリータイプ:金属元素を含まない有機色材を用いたウエハです。耐熱温度は200°Cです。

3.用途

プラズマで処理された程度を数値で比較出来ますので、以下のようなプラズマプロセス管理に適しています。

1) 同一ワーク上のプラズマ処理量の均一性評価と調整作業
2) 定期的にプラズマ処理量を検査し、プロセスが適正な処理範囲で行われているかどうかの判断
3) プロセス装置の機体差の把握と均一化するための調整作業

4.適用出来ない設備

ⅰ) 不純物の飛散(コンタミネーション)に敏感な設備(多くの半導体製造装置が該当します)では使用出来ません。
ⅱ) スパッタやプラズマCVD、AIPなど成膜装置では、インジケーターの表面に膜が付き、
色差の比較が困難になりますので使用出来ません。(いずれの場合でも成膜を伴わないプラズマの条件出し等ではご使用頂けます)
ⅲ) 400℃以上の高温環境下では使用出来ません。

製品の詳細は、株式会社サクラクレパス様のWEBサイトで確認出来ます。(https://plazmark.craypas.co.jp/
生産装置の管理などに非常に有効なツールですので、是非PLAZMARK®の導入をご検討ください。

アリオスでは、お客様の装置に合わせたプラズマ計測・診断ツールの選定、プラズマに関するご相談も承っております。
ご不明な点やご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

PLAZMARK、Plasma Indicator、プラズマ見える化、プラズマインジケータは(株)サクラクレパスの商標または登録商標です。
PLAZMARKは日本、ヨーロッパ共同体、米国、その他の国で商標登録されています。

(営業技術部 森)

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2019.05.27[ エアロゾルサンプラー(エアロゾルサンプル採取装置) ]

AerosolSampler
エアロゾルサンプラー
(地上設置型)

アリオスは、「真空技術」と「プラズマ技術」を専門としていますので、ほとんどの製品は真空装置やプラズマ関連機器ですが、「真空」でも「プラズマ」でもない研究用特殊機器も作っています。

今回ご紹介する『エアロゾルサンプラー(エアロゾルサンプル採取装置)』は気象研究用の装置で、大気中の微粒子(エアロゾル)を採取する小さな装置です。
特注気象観測用装置の設計製造は創業当初からお取引いただいている気象研究所様のご依頼で始まりました。
エアロゾルサンプラーはそのひとつで、現在も大学や研究機関のお客様からご注文いただいています。

大気中のエアロゾルにはさまざまな発生源と種類があり、地球の環境や気候に影響を及ぼしています。
温暖化などの気候変動への影響だけでなく、黄砂やPM2.5など健康に被害を及ぼすものもあります。
エアロゾルをさまざまな場所で調べることにより、分布や種類のほかにどのように移動しているかも知ることができます。

アリオスでは固定設置用のほか、船舶、航空機、気球搭載用など使用環境に応じたエアロゾルサンプラーを開発してきました。
また、採取サンプル数、採取プログラム、遠隔操作対応など、さまざまなご要望にお応えして設計しています。

↓南極での観測。
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20130305.html
https://www.nipr.ac.jp/info/notice/20150313.html
AerosolSamplerAerosolSampler
上記の写真は南極で使用していただいた気球搭載用の最小・最軽量タイプ(無人機用2号機)です。

アリオスでは、真空・プラズマに限らず研究開発用機器の設計製造、生産用機器・装置の設計製造、開発受託などの事業を行っています。
「こんな実験・装置を具体化したい」というご相談をお待ちしております。

(営業技術部 Sn)

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2018.02.06[ 小型RFプラズマ源 SRPS-101 ]

いつも弊社のウェブサイトにご訪問いただき、誠にありがとうございます。
今回は、新製品の「小型RFプラズマ源」のご紹介です。

SRPS-101
(小型RFプラズマ源 SRPS-101)

本システムは、試料をクリーニングする目的で開発した、「誘導結合型小型プラズマ発生源」です。
独自の手動マッチング回路により、安定したプラズマ発生が可能となり、電子顕微鏡等に搭載することで、試料の清浄化や高精度な分析を可能とします。
RF電源は、高効率電子回路により、コンパクトで省電力を実現しています。

SRPS-101本体の主な仕様 (SRPS-101とは、Small RF Plasma Source 100W 01号機の意味です。)
項目 仕様および内容 備考
接続フランジ KF(NW)40 / CF70
放電管 φ20mm石英放電管
RF導入方式 誘導結合方式(ICP)
動作圧力 0.4Pa(3mTorr) ~ 400Pa(3Torr) Air,Ar (N2,O2)
プラズマ確認 石英放電管により、放電状態を観察可能 プラズマ分光も可
ガス導入ポート 1/4 swagelok VCR1/4 可
冷却 ファンによる強制冷却

ガス種により安定動作圧力は変動しますが、幅広い圧力範囲でご使用頂けます。
また、お客様より『実験内容がかわり、ガス種を変更したい。』などの要望を頂きます。
ガス種、圧力、取り付け装置を変更すると、反射波が取り切れない、安定放電が難しくなるといった場合には、マッチングボックス内の調整が必要となります。
不整合状態(マッチングが合わない状態)で長時間の運転を行うと、異常発熱などを引き起こす場合があります。必ず反射が入射の10%以下になるように調整が必要となります。
放電中は放電管から紫外線が発生しますので、注視しないで下さい。仕様条件によりオゾン臭がある場合は、局所排気の構築をお勧めします。

RF電源の主な仕様
項目 仕様および内容 備考
サイズ 202×97×210 ハーフラックサイズ
RF出力範囲 5~100W
周波数 13.56MHz
電源 AC100V 50/60Hz 200W AC100 1φ2A コンセント接続

この小型RFプラズマ源はパワーも本体も小さいですが、小さいからこそ設置場所を選ばず、持ち運びが楽なので様々な装置での実験が可能です。
CVDプロセス等のアシストに直ぐ実験出来るのでは?など、ご検討頂けるので無いでしょうか。
当然、ご使用条件に合わせたカスタマイズも可能です。

また、小型プラズマ源と言えば、弊社には 片手に収まる 超小型マイクロ波プラズマ源 SMPS-201 のラインアップもございます。
放電管はアルミナ材を使用しており、アルゴン、窒素、酸素、フッ素系のガスにも対応しています。
プラズマ密度、動作圧力にも違いが御座いますので、詳細はお問い合わせ下さい。

弊社では、新規デバイス開発のお手伝いが主な業務となっており、装置およびコンポーネントもお客様のご希望仕様に合わせたゼロからの設計が多くなっております。
安全第一、操作性、メンテナンス性、装置安定稼働を考慮し、ご提案して参ります。

(営業技術部 T.O)

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2017.11.20 [ SHOOTING STAR challenge ]

ARIOSは「人工流れ星」挑戦プロジェクト〈SHOOTING STAR challenge〉のサポーティング・パートナーです。

SHOOTING STAR challenge〉は宇宙開発ベンチャー企業の株式会社ALEが開発を進める人工流れ星プロジェクトです。
アリオス株式会社は、流れ星となる材料開発のための実験装置でプロジェクトに協力しています。
10月1日に放送されたNHK「サイエンスZERO」でもプロジェクトが紹介されましたが、
そのシーンで映っていた実験装置は弊社製です!

と言ってもほんの一瞬なのでほとんどわかりません。社員でも気づいたのは2人だけでした。

その装置の全体像はこんな感じです。
arc chamber
大気圏突入時を模して、サンプルに真空中で高温プラズマを照射する装置です。

ARIOSは様々なプラズマ実験装置で研究開発のお手伝いをしています。

(営業技術部 Sn)

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2016.04.28 [ ご紹介 第2弾-小型スパッタ装置 ]

前回の「ご紹介第1弾-インターロックバルブ」からもう2ヶ月半・・・
ずいぶん暖かくなりましたね。梅雨までのこの短い期間は、出かけやすく家でも過ごしやすい気温で私はとても好きです。
そして、第2弾もお付き合い下さい。

「このスペースに収まる装置がほしい」というご要望に応えるべく、アリオスでは限られたスペースにも設置できる小型のコンポーネント・装置づくりを心がけています。
そのため、製品紹介ページには超小型回転導入機や小型マイクロ波イオン源などなど、名称に“小型”とつくものが多いです。

第2弾はそんな「小型~」という製品の中でも、最近お問合せ頂くことが多い「小型スパッタ装置」をご紹介させて頂きます。
http://www.arios.co.jp/products/ss-dc.html

スパッタ(=スパッタリング)は真空内で行う薄膜作製法の一つで、蒸着法に比べ付着力の強い膜を成膜できます。
そんなスパッタができる小型な装置が「小型スパッタ装置」です。

小型スパッタ装置標準仕様の一例

[寸法&仕様一例]

上の図はあくまで標準仕様ですが、横540mm、奥行き600mm、高さ1280mmのスペースがあれば設置可能です。
床面積でいえばA4用紙6枚分のスペースがあれば置けますので、ぜひ下の図のようにA4用紙を並べてスペースを確認してみて下さい!
アリオスの小型スパッタ装置はA4用紙6枚の小さなスペースに設置できるほど小型!
(※この図は原寸大ではありません)

カソードは磁場により効率的にスパッタができるマグネトロンカソードを採用しています。
1インチカソードなら最大3基まで小型スパッタ装置に搭載可能です。
スパッタ装置に搭載しているカソード(1インチ&2インチ)
[左:2インチカソード 右:1インチカソード]

小型スパッタ装置の紹介は以上です。

製品ページには掲載していませんが、高真空中で高品質な成膜ができるイオンビームスパッタ装置なども製作しています。
付けたい膜やご予算などから最適な装置構成・成膜方法をご提案致しますので、お手伝いできることがございましたらご連絡下さい。
(お問合せ または TEL:042-546-4811)

(営業技術部 N.M)

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2016.03.22 [ オリジナル技術 ]

弊社では、お客様の研究・開発のお手伝いを行うため、プラズマ技術をベースにCVD、スパッタリング、 大気圧プラズマ装置等を使い、装置開発前の予備実験サービスも承っております。

窒化や酸化処理、粉末材料の改質、CVD成膜等といった表面処理全般における新規開発を承ります。

お引き合いを頂いた新規案件では、数名でプロジェクトを立ち上げ実験を進めますが、 当然、機密保持契約等により、お客様の情報は厳重に管理されますのでご安心下さい。

幅広型大気圧プラズマリアクター

昨年より大気圧プラズマ液中プラズマの お問い合わせを多く頂いており、しばらく眠っていた幅広型大気圧リアクターを再度立ち上げました。実験機のバラックですが。

このリアクターは、弊社のオリジナル技術を用いたマイクロ波による無電極放電となっており、しかも窒素100%の連続運転が可能です。

写真は約10cm幅のプラズマですが、さらに幅が広いタイプも御座います。

只今、この装置で行えるアプリケーション開発が最重要課題となっております。
ご興味を頂きましたらお問い合わせ下さい。

長年にわたり研究開発のお手伝いを続けた弊社ならではの技術力を活かし、
お客様の研究開発スピードの向上に貢献いたしますので、まずはご相談ください。

(営業技術部 T.O)

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2016.02.12 [ ご紹介 第1弾-インターロックバルブ ]

営業技術部N.Mです。
営業技術部へ異動して、早10ヶ月が経ちます。
まだまだ分からない事ばかりで日々勉強の毎日です。
そんな私の勉強も兼ね、皆様にアリオスの製品やものづくりについて少しずつ紹介していけたらと思います。ぜひお付き合い下さい。

第1弾ということで、アリオス独自の製品「インターロックバルブ ILV-01シリーズ」を紹介させて頂きます。
http://www.arios.co.jp/products/ilv.html

インターロックバルブは面白い動きをするバルブです。

面白い動きをするインターロックバルブ

何が面白いのか・・・手動なのに、いざっという時は自動で動くのです。
通常は手動バルブとしてお使い頂け、ポンプ電源と接続するとポンプの停止と同時にバルブを自動でクローズ。
ポンプ電源以外の電源と接続すると、停電時などで電源が落ちると同時にバルブを自動でクローズ。
なかなか空気の読めるバルブですね。

ただベント機能は設けていません。より効果的な安全対策として、アイソレートバルブやタイミングリークバルブなどのベントバルブを下の図のように排気系に繋いで頂くと、 ロータリーポンプからのオイルバックを防ぐことができ、オススメです。
安全対策一例

そしてこのバルブ、リークディテクタの派生技術として開発したものなのです!
ブログ「Heリークディテクタ」を既に読んで下さった方はご存知かもしれませんが、下の写真の試作機Heリークディデクタにもちゃんと組み込んでいます。
社内機でもちゃんと使っています
ちなみに、写真の通りインターロックバルブの頭部分は当初黒でした。色についても話し合いと試作を重ね、その結果今の緑色となりました。

インターロックバルブの紹介は以上です。

これからも皆様のお役に立てるものづくりのため、誠心誠意努めて参りますので、どうぞよろしくお願いします。
また、第2弾も楽しみにして頂けますと幸いです。

(営業技術部 N.M)

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2015.06.03 [ ラングミュアプローブシステム ご購入までの流れ ]

こんにちは、営業技術部 Aと申します。
今回のブログでは、ご用命を多く頂いておりますラングミュアプローブ ご購入」の流れについて、ご紹介したいと思います!
どのような流れで購入まで至るのだろう、どのようなサポート体制なのだろう・・・など、
少しでもアリオスの製品、サービスをお知らせできれば幸いです。

プラズマ診断 プラズマ計測ならラングミュアプローブシステム

[プラズマ診断 アリオス社製ラングミュアプローブシステム]

1,ご使用環境のヒアリング
お手持ちの装置仕様、成膜有無・成膜速度、取付ポート・測定したい対象の位置関係などをご確認します。
手動測定か自動測定か・・・・お客様の装置において、1番最適なシステムご活用方法を検討します。
弊社の営業がお伺いすることもできます。実機を見ながらのご相談が可能です。

*ここで少しご紹介 自社開発ソフトウェア「LMP-100SCAN」*
このソフトでは、プローブ自動切換と自動測定、プラズマパラメータの自動算出をすることができます。
ノイズに強い直線近似技術と接線法の組み合わせで、高精度の算出能力を持っています。
ソフトにより、短時間での測定が可能となるため、プローブの成膜やスパッタによる測定誤差を最小限に抑えることができます。
実験をより効率的に行いたい、再現性の高い実験を目指す際は、ソフト活用もご検討いただければ幸いです。

2,購入品の仕様の決定
使用環境をふまえ、プローブ形状(直線導入型・屈曲導入型)や先端の長さなど、ご購入品の仕様を決定します。
お手持ちの電源やPCがある場合は、お申し付け下さい。

プラズマ診断 プラズマ計測ならラングミュアプローブシステム

[ラングミュアプローブシステム ユニット構成]

3,お見積提出,ご購入
以上を踏まえ、お見積を提出します。
納期につきましては、おおむね1.5ヶ月~でご相談の上決定します。
納入時の取付、測定に関するオペレーションも承ります。ご希望の際はお申し付けください。

その後、社内では設計、部材手配、組立、ソフト調整・・・・と納入に向けて動き始めます!

4,納品
社内検査後、いよいよ納品です。ご購入品をまとめて発送いたします。
(取付作業をご希望されていた場合、弊社技術担当がご納入・オペレーションいたします。)

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購入までの流れは以上です。
アリオスでは、仕様やご予算をふまえ、最適なラングミュアプローブシステムを提案します。

研究開発にプラズマ診断を役立てたい、気軽にプラズマ診断を始めたい・・・・
そんなご要望がありましたら、ぜひご相談下さい。
デモ機貸出も行っております。
お問い合わせは、042-546-4811(お電話)または、お問い合わせまでお願い申し上げます。

プラズマ診断 プラズマ計測ならラングミュアプローブシステム

[電気系社員 組立作業中です]

(営業技術部 A.M)

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2015.05.08 [ 導波管の幅を広げる ]

マイクロ波用導波管は、周波数によって横幅が決まってしまいます。
この横幅は、マイクロ波の自然波長の1/2以上が必要で、それ以下ですとマイクロ波が通過しなくなります。
それでは、逆に広げる場合はどうすればよいでしょうか?
基本的に制限はないので、広げることは可能です。その例を下図に示します。

横幅を広げた導波管

[横幅を広げた導波管]

しかし、このままでは、モードが不安定になるので、幅が約1.2λを超えたところで隔壁を設けます。
物質へは、複数の導波管を横に並べたような状態で、マイクロ波照射されます。
隔壁の間隔は、上に書いたとおり、λ/2以上であれば通過しますが、ぎりぎりの値では、損失が大きいなどいろいろ問題があるので、0.6~0.8λぐらいに取ると良いでしょう。
このようにすることで、TE10モードを維持したままのマイクロ波導入が可能です。
上図の導波管の中の隔壁を、下図に示します。左のフランジから中を覗くようにして撮影した画像です。
この例では、およそ2倍に拡幅したので、隔壁は1つです。

隔壁を設けている導波管

[隔壁を設けている導波管]

(編集子ss)

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2015.04.24 [ スリースタブチューナー 製作現場に突入! ]

前回のブログにて、スリースタブチューナー設計者のインタビューを掲載しましたが、
今回はついに…スリースタブチューナーの製作現場に潜入したいと思います!

社屋1階の電気グループの作業場では、早速スリースタブチューナーの組立が行われていました。
製作工程では、まず芯とN型コネクタのはんだ付けをします。
そしてここから詳しくお伝えしたいところですが・・・・・・この先は職人技の世界。
製作工程については、極秘との申し出をいただきました。(残念!)
感想としては、製作工程では、絶妙な調整作業を行っています。その技術者の作業が、製品の性能を左右しているのです。

そして、完成した製品はこちらです!

スリースタブチューナー

[マイクロ波用スリースタブチューナー(同軸タイプ)]

製品完成後は、社内検査です。
ネットワークアナライザーを使い、挿入損失が0.1[dB]以下であることを確認します。
これにより、出力したいマイクロ波を最大の効率で伝送できていることが分かります。

スリースタブチューナー検査成績書

[スリースタブチューナー 検査成績書]

次にマイクロ波漏洩検査です。マイクロ波漏洩検知器を使い、200Wを通しているスリースタブチューナーを検査します。
漏洩していないことを確認できれば、社内検査は終了です。検査を通過したスリースタブチューナーは、その後お客様に納品されます。

これにて、設計~組立・検査、お客様の手元に届くまでの一連の工程は終了となります。
シンプルな構造に見えますが、マイクロ波を扱うので、多方面にわたる想定が必要です。
アリオスでは、自社設計・製造による責任あるものづくりを実践しています。
プラズマに関するコンポーネントは、是非ご相談下さい。

(営業技術部 A.M ※4月より総務部から異動となりました!)

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2015.03.16 [ スリースタブチューナー 設計者インタビュー! ]

こんにちは、総務部Aと申します。
アリオスは、プラズマ・真空技術の専門集団として、日々技術を磨いていますが、
同時に、プラズマのキーテクノロジーであるRF・マイクロ波の技術開発にも取り組んでいます。

本日は、使い勝手がいいと評判のアリオス製 スリースタブチューナー(同軸タイプ)の設計者にインタビューをしてきました!

スリースタブチューナー

[マイクロ波用スリースタブチューナー(同軸タイプ)]

それでは、開発設計を担当した、技術部Tさんにお話を伺いたいと思います。

―マイクロ波用スリースタブチューナーを開発・設計に至った経緯を教えて下さい!
「当時マイクロ波について集中的に勉強していました。そんな中、ある講習で設計に関する様々なヒントをもらったんです。
受講後、いかに挿入損失が少なく、発熱を起こさないスタブチューナーを作りたいなと思い、開発を始めました。」

―講習での勉強が、そのまま製品に結びついたんですね!
「はい。同時に、アリオスのマイクロ波プラズマ源等に、同軸タイプのチューナーが必要となっていました。
大型の導波管タイプでは、小型のプラズマ源にマッチしないので。」

―そこで、同軸タイプのスリースタブチューナー開発に至ったのですね!こだわった設計のポイントなどあれば教えてください。
「まず、接触面の設計、それから材料選定。完成までには、何度も試作を作りました。」

―アリオスのスリースタブチューナーは、特にコンパクトですよね。
「ケーシングとネジの接触は、特に工夫しました。結果、ケーシングを短くすることに成功しました。(ここは設計の秘密だそう)
完成はしましたが、その後も、改良を続けているんですよ。
う~ん、ちょっと待って、これを設計したのはいつの話だろう・・・(図面を見てみる)・・・98年!!そんなに昔だったのか・・・。」(かなり驚いている)

―98年ですと、17年前!その間、改良のペースはどの程度なのでしょうか?
「お客様のご要望や社内での検討を生かし、これまでに6回は改良しています。
今は電気系グループの若手が新しいスリースタブチューナーを開発しているんですよ。さらに小型化を目指しています。」

―新たに開発しているとは・・・技術部の探究心には驚きです!
 今日はありがとうございました。最後に一言メッセージがありましたら、よろしくお願いします。
「これからもお客様に使いやすいコンポーネントを提供したいと思っています。
そして社内のみんな・・・・講習で学んだことは形にして、生かしましょう!」

ありがとうございました!
新しいスリースタブチューナー(同軸タイプ)も開発中だとは、驚きです。
そして、講習で学んだことは生かせ・・・なんと胸に刺さる言葉・・・日々頑張ります!

これからも、真空・プラズマ技術の装置メーカーとして、使い勝手のよいマイクロ波技術をご提供できれば幸いです。
次回ブログでは、実際に社屋1階に行き、スリースタブチューナーの製作過程をご紹介したいと思います。
どうぞお楽しみにください。

*関連リンク*
製品ページ:同軸ケーブル用スリースタブチューナー TSTB-201A

(総務部 A.M)

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2014.12.19 [ マイクロ波プラズマ源とRFプラズマ源の違い① ]

皆様、こんにちは、電気グループのSです。
今回は、マイクロ波プラズマ源とRF(13.56MHz)プラズマ源の違いについて、まとめてみたいと思います。

項目 マイクロ波プラズマ源 RFプラズマ源
周波数、波長 2.45GHz、約12cm(真空中) 13.56MHz、約22m(真空中)
プラズマ密度 同様な構成では、RFプラズマ源よりも一桁大きくできる。 通常の構成では、マイクロ波より低くなる。
電子温度 <1ev >1ev
プラズマとの結合 主に電界印加(静電結合) 静電結合(CCP)と誘導結合(ICP)の2通り。ICPのほうが高密度プラズマを作りやすい。
給電方式 導波管、同軸管、同軸ケーブル(主に200w以下)
*アリオスでは、同軸ケーブルでは500wまで実績があり。
ケーブルが直径30~40mmと太くなり、取り回しに工夫が必要となる。
同軸ケーブル
*1kwでも直径20mmと細いケーブルで給電可能。
電波漏洩への法規制 ISMバンドだが、電気用品安全法に電子レンジの漏洩電波に関する規制がある。(最大5mw/cm2,電気用品安全法施行令参照のこと) ISMバンドのため、なし。 但し、人体保護、機器保護などの観点から、防護が必要。
大きなプラズマの作りやすさ やや難、工夫次第
λ/2ごとにムラが出来る可能性がある。波長が短いため、RFよりも大きなプラズマは作りにくい。アリオスでは、直径300mmの製作実績。
容易
λ/2ごとにムラが出来る可能性はあるが、波長が長いのでこれが問題になることは少ない。
イオン源orラジカル源 大きなイオン電流を得やすい。 N (窒素原子) ラジカルについては、RFのほうが得やすい。
価格 構成次第だが、マイクロ波電源+導波管コンポーネントと
RF電源+マッチングボックスの価格差が大きくないため、現状では、あまり変わらない。

次回もお楽しみにいただければ、幸いです。

(技術部電気系 S)

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2014.02.10 [ 香辛料とナノ粒子 ]

香辛料がナノ粒子製造という最先端技術に使われるかもしれないという話です。

クローブ

[クローブ:長さ15mmほどの香辛料]

クローブは、インドネシア原産の香辛料です。日本名は丁子(ちょうじ)です。
釘に形が似ていることから、この名があります。香りが強烈な香辛料です。カレー粉の香りの主成分といえるでしょう。 正露丸のような薬臭くも感じます。と思って調べたら正露丸の原料でもあるんですね。

このまま(ホール)で使うときは、食材と一緒に煮込んだりして香りを食材に移しますが、クローブそのものは食べる前に取り除きます。 また、粉末にして中華、菓子などに練り込んだりもします。紅茶、コーヒー、ワインなどに浸すとさわやかな感じになります。 クローブは、シナモン、山椒などと一緒に包んで和装用の匂い袋としても使われます。インドネシアではクローブからたばこも作られるそうです。 また、クローブから採られた精油(丁子油、Clove oil)は、殺菌、防腐作用があり、歯科用鎮痛剤としても使われるようです。

クローブの香りのもとはオイゲノールという成分で、クローブ精油(丁子油)の70-95%を占めます。 オイゲノールには還元作用があります。この性質のためか、日本刀などの刀剣類の手入れ、保存などにも使われるようです。 通常のさび止めオイルは空気を遮断してさびの発生を防ぎますが、丁子油には還元作用がありますので、それ以上のさび止め効果があるのかもしれません。 経験的に得られたものでしょうが、丁子油を刀剣類の手入れに使った知恵には驚かされます。

最近では、この還元作用を使い、丁子油で金属塩を還元し金属ナノ粒子を生成したという報告があります(参考文献 1~3)。

参考文献3は、市場で買ってきたクローブを砕いて、抽出液を作り、それに硫酸銅を混ぜて加熱して、銅ナノ粒子を得たという報告です。 銅は酸化しやすい金属の一つですので、金属銅のナノ粒子が生成できた事から考えると、還元力はかなり強いと思われます。 こうした自然にあるものを使い、環境負荷の少ない化学合成は、グリーンケミストリー(Green chemistry)、グリーン化学合成(Green synthesis)などと呼ばれ、研究例が増加してきています。

参考文献

1. Nidhija Roy, Archana Gaur, Aditi Jain, Susinjan Bhattacharya, Vibha Rani , Green synthesis of silver nanoparticles: An approach to overcome toxicity, environmental toxicology and pharmacology 36(2013) 807-812

2. Raghunandan D, Bedre MD, Basavaraja S, Sawle B, Manjunath S, Venkataraman A.Rapid biosynthesis of irregular shaped gold nanoparticles from macerated aqueous extracellular dried clove buds (Syzygium aromaticum) solution. Colloids Surf B Biointerfaces 2010;79:235-40.

3. Ipsa Subhankari, P.L. Nayak"Synthesis of Copper Nanoparticles Using Syzygium aromaticum (Cloves) Aqueous Extract by Using Green Chemistry", World Journal of Nano Science & Technology 2(1): 14-17, 2013,
http://www.idosi.org/wjnst/2(1)13/4.pdf

(編集子ss)

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2013.11.21 [ 金属ナノ・マイクロ粒子の最新技術と応用 ]

表紙

[金属ナノ・マイクロ粒子の最新技術と応用]
シーエムシー出版 67,200円

北海道大学の米澤先生に声をかけていただいて、解説本の一項目を執筆させていただきました。
担当させていただいたのは、液中プラズマによるナノ粒子生成に関する項目です。内容は、弊社で開発しているマイクロ波液中プラズマのみならず、液中プラズマ技術のレビューとなるように書いてみました。文献を調査する必要が生じて、なかなか時間的に厳しかったです。
是非、購入してくださいなどと個人の方に言えるような価格ではございませんが、機関などでご検討頂けたら幸いです。

出版社の当該ページ:シーエムシー出版 金属ナノ・マイクロ粒子の最新技術と応用

(編集子ss)

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2013.11.07 [ 技術の伝承 分子の発光スペクトル ]

続けてで恐縮ですが、またまた古い本の話です。

表紙

[R. W. B Pearse, A.G.Gaydon The identification of molecular spectra]

以前から探していた本です。しばらくぶりにamazon.co.jpで検索したら新品が出品されている!
価格に少々躊躇しましたが、30秒ほど考えてクリックしてしまいました。分子からの発光スペクトルについて、波長および帰属などが掲載されている本です。 多くの分子スペクトルがまとまった本となると非常に少なくて、大学のとある先生の研究室で見せられてからずっと入手の機会を探しておりました。
分子からの発光スペクトルは、www.nist.govなどのオンラインでデータベース検索できますが、このデータベースもこれを参考文献としてあげていますし、 こうしたデータベースでは記載されていない帰属についての説明などコメントが付いていることも理解に役立ちます。
この本の初版は、1941年でこの第4版は1976年発行です。たまに、古書で出てくることがあるのですが、状態を考えるとなかなか手が出せませんでした。

この本は、裏表紙の見返しに、『Produced by Amazon Printed in Japan』と記されています。
購入後、しばらくしたら、予約受付中となっていたので、おそらく、オンデマンドで数がまとまったら印刷するというふうにして復刻された本なのであろうと思います。
この類の本にありがちなコピーが悪くて文字がつぶれている等ということもなく、活字のクオリティが再現されている見事な印刷です。 おそらく入手を狙っていたのは私だけではないのだろうと思います。検索されている回数などを集計して、印刷したら売れると予想して復刻されたのでしょう。
アマゾンの思惑通りの消費行動をとったことには多少悔しい思いもありますが、それ以上にアマゾンのマーケティングの見事さに感服するとともに、先人の叡智を入手できたことに満足しています。

中身

[本の1ページ 分子名、帰属などの説明、波高スペクトルの波長と強さなどが記されています]

(編集子ss)

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2013.10.23 [ 真空に関する古い本 ]

表紙

[Scientific Foundations of Vacuum Technique]

この本は、真空関連の専門書において、コンダクタンス計算式を示す際に、引用文献として必ずと言っても過言ではないほど示される本であり、真空排気系でコンダクタンスを精密に議論している参考書です。
アルバックの真空ハンドブックでは、空気で常温を仮定すると、コンダクタンスは~と表せるなどと、 さらりと書かれていますが、様々な条件が重なると、ここから1桁近い差が出ます。 結果的に設計余裕を大幅に見込んでおく必要があり、このことが気になっていました。

本書では、気体の粘性も含め、かなり詳細な議論がなされています。
ある分野の探求が一通り終わると、結果としてその分野の研究者がいなくなり、年を経るに従い、 教科書や参考書の内容に肉付けが無くなり、骨と皮のような式だけが残ります。
結果として、少し複雑な事になると、一から始めるか、もしくはこのようにまだ黎明期の本が残っているならばそれを探し回って、 海外から取り寄せる等といったことが必要になってしまいます。
おそらく、1950年代あたりが、コンダクタンス計算の研究者が存在した最終の年代なのでしょう。 コンダクタンスの計算は、真空装置の基幹技術です。後世に技術を伝承する努力をもう少し頑張った方が良いのではという気もします。

この本は、結果的にニューヨークの古本屋に注文しました。
SALで送られてきたのでしょうか、注文から20日ほどで到着しました。1962年発行。 状態は良好と書かれていましたが、50年近く前の本です。この程度の損傷なら状態が良いと判断すべきでしょう。

中身

[粘性流に関する記述のあるページ]

(編集子ss)

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2013.06.25 [ 技術の伝承 その2 波形観測用高電圧プローブ ]

オシロスコープ用の高電圧プローブを現地調整で持って行かれてしまいましたが、 社内で高電圧の高周波電圧を測定する必要が生じました。それで、大昔に作った高電圧プローブを久々に作りました。
まず、太めの同軸ケーブルを10cmぐらいにカットし、外皮を剥がして、ソールドの編目銅線が見える状態にします。 ここにテフロンなどの薄いフィルムシートを被せ、さらにその外側に、銅箔あるいは編目銅線を被せ、 それぞれからリード線を出し、熱収縮チューブを被せてできあがりです。断面は下図のようになっています。
切断した図

容量分割ですので、直流電圧は伝送できませんが、わりと周波数範囲が広く数十MHzぐらいまで追従します。
外部導体1と2の間の誘電体の厚みと材質で減衰比が変化しますが、うまく選ぶと、100:1ぐらいにすることが可能です。
完成品

このプローブの作り方は、確か30年ほど前に、レーザー関連の技術者から教えて頂きました。
当時のレーザーは、窒素ガスなどをパルス放電させて発光させるガスレーザーが主流で、高電圧のパルス電源を使っていました。そうした高電圧パルスを測定するために考案されたものだったようです。

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2013.06.13 [ 図解よくわかる電磁波化学 ]

編著者より、献本を頂きましたので、ご紹介したいと思います。

表紙

[堀越 智 編著 図解よくわかる電磁波化学]
日刊工業新聞社 2,000円

副題にもあるように、マイクロ波、テラヘルツ、光の波長を使った化学ならびにメタマテリアルを扱っている一般向けの解説書です。 対象としている読者は、化学系ならびに電磁波を扱う学生および研究者などです。

電磁波というと、マクスウエルの方程式など難解な式の羅列で、辟易されている方も多いと思います。
電気屋にとっては、式を見つけて安心するようなところがありますが、一般の方はそうはいかないでしょう。
また、化学系の方は、そもそも大学の科目として、電磁気学があるところが少ないでしょうから、 電磁波の数式を理解する労苦は、想像にあまりあると思います。
電気系の学科でも、電磁気学は多くの学生にとって、鬼門の一つです。

この本には、数式はほとんど出てきません。この点において、化学系ならびに一般の方でも容易に読み進めることが出来ると思われます。
マイクロ波や光の照射によって、化学反応を促進したり、 特定の反応のみを進めることが出来ます。これらの技術はすでに使用されていますが、 具体的かつ最新の研究の一歩手前当たりまでを網羅して書かれています。

一般受けする話と面白そうなのは、テラヘルツ波による薬物や爆発物の検出、 メタマテリアルによる透明マントの可能性あたりの話でしょうか。
透明マントは、新書版などで、「透明人間になる方法」(PHP)「透明人間の作り方」(宝島社新書)などがありますが、 それらよりも的確かつ専門的な記述がなされています。
これらの技術全体を見渡すには、良い解説書と思います。

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2013.05.30 [ マイクロ波リークデテクタ ]

業務上、2.45GHzマイクロ波を扱った実験を多数行っていますが、 予期せぬマイクロ波漏洩を起こすことが皆無ではありません。
その為実験時には、少量ずつマイクロ波を印加して漏洩を確認したりします。 その際、基本的には校正されたそれなりに高価な測定器を使いますが、大型で扱いにも注意を要するので、 簡易的な測定器で代用することもあります。
その様に使っている測定器の一つが下記の製品です。ネット通販等で1万円前後で入手できます。
測定器

この測定器と精密で高価な測定器の表示の違いは、簡易的なこの測定器のほうが、数値が高く出ること。
例えば、校正された測定器が1mW/cm2を表示していたとすると、同じ位置で、2~4mw/cm2といった表示になります。
測定のレスポンスや測定方法が違うので、一概に数倍の数値が表示されるとは断定できませんが、いずれにしても、少なめに表示されることはほとんど無いので、安全サイドに振ってあるという点では、使える測定器かなと思います。 但し、大きめに表示されるということをご存じで無いと、トラブルが起きる可能性はあります。

もし、一般のご家庭で電子レンジの近くで、実際には、電気用品安全法技術基準より小さい漏洩なのに、超えていると誤認識を起こす可能性があります。 また、Wi-Fiなどの無線通信でも、電子レンジと同じ2.45GHzを使っており、このピークパワーは、電気用品安全法技術基準の電子レンジの基準よりも大きくなっています。

この測定器は、Wi-Fiに対しては、その出力がパルス的な発振であるためか、感度が低い印象を受けます。 この測定器は、様々な名前で売られています。『CEM DT-2G』との表記がありますが販売者によっては全く別の型番がつけられていることがあります。 実際にそうした「同じ形で違う型番」のものを入手した範囲では、ほとんどが同じものでした。
しかしながら、当社の製品では無いので、保証はいたしかねます。

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2013.05.15 [ 技術の伝承 その1 ]

伝統芸能に限らず、技術の世界にも、次世代への技術の伝承に関する問題があります。
必要な知識や技術であれば、心配せずとも自ずと次世代に受け継がれるという考え方もあるかと思います。
老人が「伝承しなければならない」と考える技術は、実はすでに不要となりつつある技術なのかもしれません。
次世代には次世代なりの技術があり、老人が自らの技術を次世代でも必要と勘違いしている可能性は多々ありそうです。

そうは書いても、規格品など、現在使われ、近未来も必ず使われる技術はあります。
そのような範疇に入るであろうコンフラットフランジは、意外に正しい設計や扱い方がおろそかになっている部品の一つかもしれません。
1989年に、日本真空協会(現 日本真空学会)の雑誌「真空」に掲載された論文があり、 コンフラットフランジに関する一文としては秀逸と思っておりました。おそらく、そう考えたのは私だけでは無いのでしょう。

このバックナンバーがインターネットで公開されています。
特に若い方々にとっては、意外にご存じないことが良くまとまっているのではないかと思います。

この雑誌が掲載されているデータベースもあります。
また、雑誌全号のデータをご希望の方は、日本真空学会のWebに購入の案内があります。
購入案内のフレームのみは、こちら。

ご参考までに。

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2009.02.11 [ DC電源のノイズ ]

何でもかんでもコストコストで、結果的に少し要求の厳しい製品を選ぼうとすると入手困難な状況に陥ることがあります。

近年は、DC電源もスイッチングレギュレータが主流となり、コスト低減のため出力に大きなノイズが乗っている製品が極めて多くなっています。
マイコンチップの駆動などでは、そんな電源でも問題なく使えますが、少し厳しいアナログ回路では、電源のノイズも厳しく管理していかなくては目的にあった製品を作ることが出来ない場合が多々あります。
今回も電源に起因するノイズにまつわるトラブルがあって、出力に200mV近いノイズが乗ってしまいました。 市販の組み込み電源やフィルターでは対処できず、結果的にドロッパー型の電源製作を決断しました。
下図は、その電源の出力ノイズレベルです。最大5mVのノイズが見られますが、これは全て外部からのノイズで、電源をON/OFFしてもノイズレベルは全く変わりません。
ノイズ写真

これ以上落とそうとすると、ノイズカットトランスなどシールド技術を駆使することになりますが、今回はそこまでは不要でした。
おそらく丁寧に製品を探せば、スイッチングレギュレータでもこの程度にノイズを押さえ込んだ製品はあるでしょう。今回は、その時間がなかったので作ってしまいました。

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2009.01.12 [ pH計を作る ]

pHメータキット
秋月電子通商のpHメータキットです。5,000円也。
pH計としては熱帯魚用のこれよりも安価な製品が存在しますが、壊れたときに買い替えになってしまうので、 修理可能なキットを作ってみました。
液中プラズマのpHをリアルタイムで測定するなど、液中に電界が印加しているような状況で、液中に各種センサーを投入すれば、センサーおよび測定器の破損は、覚悟せねばなりません。 万が一壊れても、破損箇所を特定して部品を交換すれば良いわけで、そんなときにこういう配線むき出しのキットは便利です。

ご専門分野によっては、前述のプログラムやこういう電子工作はちょっと、、と思われるかもしれませんが、わりと簡単です。
特に大学などの場合は、学生のコンピュータスキルや適応能力が高いことも多く、作れ!と押し付けてしまうと意外にあっさり出来上がってしまうことも多いようです。
なお、測定という作業は大なり小なり被測定系を乱すことがあります。pH計はもそうした被測定系を乱す作用がある測定器です。pH計のプローブからは、KCl(塩化カリウム)が溶出しています。数~数十ppmオーダーの検量を行っているときは、問題になる量になります。

(編集子ss)

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2008.12.29 [ マイコンチップだけの装置 ]

パルスジェネレータ
パルスジェネレータです。これは、製品というより習作に近いものです。
最近、非平衡プラズマ生成あるいはプラズマ密度の制御のために、電源をパルス駆動することが増えています。
世の中には、測定用途のパルスジェネレータが製品として多数ありますが、 安価なものでは必要な波形が得られなかったり、逆に機能が多すぎて操作が煩雑だったりとプラズマ制御に対して必ずしも最適とはいえないのが状況です。
それで作ってしまえということにもなるわけで、これはそんな過程で製作したものの一つです。
当社の装置には、こうしたマイコン制御の装置もいくつかあります。

さて、パルスジェネレータの場合、御覧の通り中身はほぼ ICが1個だけです。これはPICというマイコンチップです。
出力をHにする。一定時間待つ。出力をLにする。一定時間待つ、、、、、を繰り返すプログラムを作れば、パルスジェネレータが出来上がります。
何らかの条件が整わないとパルスが出ないようにする、外部のボリュームで時間を変化させるなどといったこともプログラムで容易に実現できますし、 また、お客様の御要望に応じてのカスタマイズや変更も簡単です。
プログラムはさほど難しくありません。当社では、プログラム経験のない技術系新入社員であっても、 1~4時間のレクチャーで、この程度のプログラミング能力は習得できているようです。

(編集子ss)