実験/量産用 プラズマ・真空装置メーカーのアリオス株式会社 「プラズマに関しての実践的テクニック」

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プラズマに関しての実践的テクニック

はじめに

ここでは半導体製造や表面改質などに使用する側 (すなわち装置ユーザー) から見て、プラズマに関する必要な知識を解説してみたいと思います。
プラズマに関する文献は 真空とプラズマに関する参考書籍 でご紹介していますが、ある程度広い分野をカバーする学術書が多いです。 そのため、まずは基本的なところを押さえたいというビギナーには敷居が高い場合もあります。 そこで、ここではビギナーを対象にプラズマに関してその応用面から見た基本的な事項を述べてみたいと思います。

プラズマとは

プラズマとは、原子や分子から電子が離れ、イオンと電子が混在した状態をさします。
実用的なプラズマの中にはイオン、電子以外に中性ではあるが電子が励起軌道に移動した原子分子 (励起種:ラジカル) や、基底状態のままのガス分子も含まれています。

身の回りのプラズマ

蛍光灯の話 の通り、蛍光灯の中には 数 100Pa のアルゴンガスと数Pa の水銀蒸気が封入されています。 管の両端のフィラメントから放出された 電子がArを励起し、励起したArが水銀蒸気を励起することによって水銀のプラズマが発生します。この水銀のプラズマは、253.7nmの輝線スペクトルを発生します。 253.7nmの光は紫外線であり見ることはできませんが、この紫外線を蛍光灯の管の周りに塗られている蛍光物質に当てて、可視光線を発生させています。

自然のプラズマ

空で見ることができるプラズマ-Hα像 空で見ることができるプラズマ-オリオン大星雲 空で見ることができるプラズマ-マックホルツ彗星

[太陽のHα像 / オリオン大星雲 / マックホルツ彗星]

図1:空で見ることができるプラズマ

宇宙空間のほとんどは水素プラズマで埋まっていると表現しても過言では無いほど、宇宙空間でプラズマ状態は一般的です。私たちが最も恩恵を授かっているプラズマは太陽です。 太陽の中では、水素がプラズマ状態となり核融合反応が起きています。 太陽は水素プラズマから多くの輝線スペクトルを観測することができます。
図1 太陽のHα像は、Hα線 (656.2nm:赤色) のみを透過するフィルターを通して撮影した太陽の一部です。 光球面からプロミネンスとよばれる炎状のプラズマが吹き上げているのが分かります。このプロミネンスは、太陽黒点の磁界により加速され、極めて高エネルギーとなることが知られています。
水素は宇宙空間に最も多く存在している元素です。冬の代表的な星座に三ツ星で有名なオリオン座がありますが、この三ツ星の下にはオリオン大星雲という大きな星雲があります。 街灯の少ない暗いところでは、肉眼でもわかるほど大きく明るい星雲です。この星雲をカメラで撮影すると、図1 オリオン大星雲のように赤く写ります。 これも水素の Hαの輝線スペクトルによる発色です。図1 マックホルツ彗星は、彗星(マックホルツ彗星)の画像です。彗星の青緑色には、炭素 (C2:474nm、517nm) 及びその化合物 (CN:388nm) の輝線スペクトルが含まれています。 これは彗星を構成する物質が太陽熱で溶けだし、太陽風でプラズマ化されて発光しています。

[参考] 水素の発光スペクトル水素プラズマを楽しむ “極大期の太陽”

熱プラズマと低温プラズマ -熱平衡と非熱平衡-

熱プラズマと低温プラズマに関する定義は、いくつかあるようです。熱プラズマは熱平衡プラズマ、低温プラズマは非熱平衡プラズマあるいは、ただ単に非平衡プラズマとも呼ばれます。一般に、熱プラズマは電子温度とイオンそして原子の温度が熱平衡状態にある、すなわち同じである状態をさします。低温プラズマは、電子温度がイオンそして原子の温度よりも高い状態をさします。
真空のような低圧下では、大気圧に比較してこれら粒子の衝突など相互作用が少ないことから、低温プラズマになります。一方、大気圧の場合は、それぞれの粒子の平均自由行程が短く、衝突を繰り返すため、基本的には熱平衡状態となり熱プラズマとなります。このように、両者の違いは電子とイオンや原子などの重粒子の間のエネルギーの差です。

[参考] 大気圧プラズマの分類 熱平衡プラズマと非熱平衡プラズマ

プラズマ電位

通常プラズマでは、電子とイオンとの間で運動速度に差が生じ、プラズマから飛び出す粒子はイオンより電子の方が多くなります。 そのため、プラズマ全体としては正の電位となります。 この電位は浮遊電位として観測できます。 RFによる CCPの場合は Vdcになります。 浮遊電位は、プラズマの種々の条件により異なりますが、数~100V 程度になります。
プラズマ電位は、この電位に電子の最大エネルギーを足した値となります。 プラズマ電位以上の電子は、ほぼ無視できるほど微量になります。
また、相談室 プラズマQ3 で紹介していますが、プラズマは点火しているのにプロセスが進行しない場合、プラズマ電位の変化が関係していることがあります。

実践編

プラズマの作り方 -励起方法-

原子から電子を分離し、イオンにするためにはエネルギーが必要です。このエネルギーを電離エネルギー、あるいは電離電圧と呼びます。
原子から電子をはぎ取る方法はいくつかありますが、電子を当てて、その衝撃により電子を分離する方法がよく使われます。多量の電子を作る簡単な方法の一つは、フィラメントを使う方法です。フィラメントを点灯し負電位とすれば、熱電子が大量に飛び出してきます。電界を印加し、これを加速して、イオン化したい分子原子にぶつけます。ぶつけられた分子と原子は、電離エネルギーを電子から与えられイオン化します。フィラメントを使う方法は、多量の熱電子を放電条件によらず供給できますので、プラズマの点火及び持続が容易で、プラズマ密度を容易に上げられる利点があります。
しかしながら、この型のイオン源を半導体プロセスに使う場合、フィラメント及び対向電極(アノード)による金属のコンタミネーションを避けることは困難です。また、酸素プラズマなどはフィラメントを著しく損耗させます。金属コンタミネーションを避けるには、電極を無くして、無電極放電とする事が考えられます。無電極とした場合、プラズマへのエネルギー供給は、絶縁物で覆われたプラズマ室外に設置されたアンテナから電磁波(高周波)を放射することにより行います。無電極放電の最大の欠点は、点火時に多量の電子を確保できないことから、点火しにくく、放電も維持しにくい条件があるということです。

点火条件と放電条件

マイクロ波 を含む高周波による無電極放電の実現には、いくつかのハードルが存在します。
高周波電圧が、絶縁破壊電圧に至らないタイプのプラズマ源における放電スタート時の電子の供給は、宇宙線による電離、紫外線等による光電子の放出と考えられています。 この電子が電界により加速され、分子とぶつかり、2次電子を放出し、さらに別の分子へとねずみ算式に電子が増加し、放電が開始されます。 すなわち、なんらかの外的要因により、臨界条件を超える個数の電子の供給が必要になります。
もう一つは、プラズマ源の電気的インピーダンスの問題です。マイクロ波をはじめとする高周波励起型プラズマ源では、高周波電源から見たプラズマ室のインピーダンスが大きく変化します。 すなわち、プラズマが点火していない条件では絶縁体に近い気体に高周波が放射されるわけですから、インピーダンスは高くなります。 一方、放電している条件では、例えばプラズマが高密度である場合、ほとんど導体と見なされますから、インピーダンスは極めて低いものとなります。
以上のような特質から、電源からプラズマ室までの伝送路を放電条件で最適化してしまうと、点火時には点火に必要な電界を印加できなくなり、放電困難に陥る場合があります。 逆のことも起こりえます。これらの問題の解決は、オートチューニング装置を搭載するなどの方法があります。 この方法は一見、確実なように思えますが、マイクロ波装置では波長が短いために伝送路の平坦性が確保できず、効果が上がらない場合もあります。
点火装置を付加するのも一つの方法です。ガスコンロの着火装置のような火花を飛ばす装置です。この装置にはいくつかの効果があります。

  1. 電界の誘起
  2. 放電による電子やイオンなどの荷電粒子の生成
  3. 紫外線などの発生

この装置の問題点は、その取り付け方法です。放電のため探針をプラズマ室に挿入するようなことを行いますと、無電極という特質をスポイルすることにもなりかねません。 他に使われている方法は、紫外線光源の点灯などがあります。

相談室 プラズマQ2 では、プラズマが点火しなくなってしまった場合の再点火のポイントを解説しています。

プラズマ源の動作条件とチャンバーの圧力

チャンバーの圧力はプロセスに大きく影響します。プラズマ源内部の動作圧力も、プロセスに最適なイオンあるいは、ラジカルを作り出せる最適な範囲は狭い場合が多いです。 プラズマ源内及びチャンバーの圧力は、ガス流量、電極のコンダクタンス、排気系コンダクタンス、排気速度によって決まります。 このうちガス流量と排気系コンダクタンス及び排気速度は、プラズマ源内とチャンバーの圧力に対し同様に働きます。すなわち、ガス流量を増加させれば、プラズマ源内とチャンバーいずれに圧力も上昇するといった具合です。
しかし電極のコンダクタンスはそれぞれに対し逆の変化、すなわち、コンダクタンスを上げればプラズマ源の圧力は減少し、チャンバーの圧力は上がるといった具合に作用します。装置設計者はこれらを総合的に判断して、装置を設計します。
[参考] Cv値からの単位の換算アリオスのソリューション

プラズマへの電力供給による性質の違い

マイクロ波 (2.45GHz) vs RF (13.56MHz)

当社でプラズマへエネルギー供給するのに主に使っている電力は、2.45GHzマイクロ波とRF帯の 13.56MHzです。これらはいずれも ISMバンド と呼ばれる周波数帯であり、通信で使わない周波数帯であるため、電波漏洩が少し緩やかになっています。実際 2.45GHzは WiFiなどに使われていますが、、、
プラズマ発生で使われる周波数でも取り上げていますが、プラズマは周波数によって性質が異なります。
この2つの周波数でプラズマを作った場合も多少プラズマの性質が異なってきます。箇条書きにしておきます。

  1. プラズマ密度などは、マイクロ波の方が高くすることができる。一方、電子温度はマイクロ波の方が一般的に低い。これらは、プラズマの遮断周波数、電子の交番電界への追従などが関係しています。
  2. イオンはRF周波数には追従して揺動するが、マイクロ波周波数には追従しない。
  3. 原子や分子の励起状態は、両者で異なる。

プラズマへの電力供給方法については プラズマへの電力供給 でも解説しています。
ハイテクの電子レンジ? では、氷・マイクロ波・高周波の関係について取り上げております。ぜひ合わせてご覧下さい。

プラズマを表す基本的なパラメータ

  • 電子温度
    プラズマ中の電子のエネルギー分布に対応する温度をさします。プラズマ中では電子が電界に加速され、ガス粒子に衝突し、電子を叩き出すというプロセスで放電が維持されることから、電子温度とイオン温度は異なることがあります。
  • イオン温度
    プラズマ中のイオンのエネルギー分布に対応する温度をさします。
  • プラズマ密度
    電子密度、イオン密度、すなわち単位体積あたりの荷電粒子の個数のことをプラズマ密度と呼んでいます。測定方法によりバラツキが生じ、ラングミュアプローブ の場合、多価イオンは複数のイオンとカウントされてしまいます。
それぞれの算出については、電子温度・プラズマ密度の算出 をご覧下さい。

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