実験/量産用 プラズマ・真空装置メーカーのアリオス株式会社 「真空・プラズマ用語集 さ行」

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真空

私たちが暮らしている場所は、およそ 1気圧の大気で覆われています。 JISでは、真空とは 「通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態」 と定義されています。→超高真空
個人的にはさらに、「ある目的のためにちょうど良いぐらいの特定の気体が存在する一気圧以下の空間の状態」 と少し限定したいところです。

真空の単位は、圧力と同じ Pa (パスカル) を使用します。気象で使うヘクトパスカルは、100 Pa を指します。 標準的な大気圧 1013 ヘクトパスカルは、約 10万パスカルです。→圧力の単位と換算ツール
真空においては、圧力が高い場合は真空度が低い、悪い という表現をすることがあります。逆に 圧力が低い場合は、高い真空度、真空が良い といった表現をすることがあります。高低が逆転しますので、気をつけて下さい。

真空とは、本来は仏教用語で真空妙有のことをいうようです。真とは偽に対しての真です。空とは、仏教でいうところの「世の中のものはすべて空である」の空です。 真実の空ということではなく、世の中はまこと (真) に空でありながら、厳然として物質が存在しており、私たちも生きている、そのありようを指している言葉であるようです。般若心経では、これを色即是空、空即是色と表現します。 何も無さそうに見えて、そこには厳然として気体が存在している。これは真空装置屋の真空の概念そのものです。

話を戻します。工業的な「真空」を物理的にもう少し正確に言い表すと、減圧と表現できます。 つまり、1気圧 (大気圧) よりも低い圧力という意味です。さて、「ある目的のためにちょうど良いぐらいの特定の気体が存在する一気圧以下の空間の状態」 とは、いったいどういうことでしょうか?
工業ではものを削ったり、あるいは塗ったり、混ぜ合わせて何かを作るわけですが、真空でものを作ろうとする場合、ちょうど良い圧力というのがあります。 たとえば、スパッタリング という真空技術があります。→小型スパッタ装置
スパッタリングは、主に 0.1 ~ 10 Pa ぐらいの圧力でプロセスが行われます。 これは、粒子を加速して試料にぶつけ、そのものをはぎ取る技術です。 試料から見れば、表面がはぎ取られるので切削技術の一つですし、逆にはぎ取った粒子を他の基板に付着させれば成膜技術になります。 このとき、なぜ 0.1 ~ 10 Pa なのかを考えてみます。最初に粒子を加速すると書きましたが、これは秒速数 km 以上の高速の加速になります。これを実現するには、一般に気体分子をプラズマでイオン化し、電界をかけて加速することを行います。ですので、真空としては、プラズマが容易に発生できる圧力が必要であることがわかります。 この圧力は主に 0.1 Pa 以上です。次に、この加速した粒子を試料にぶつけるためには、空中を飛行させなければなりません。 これはプロセスによりますが、主に数 cm です。 この間、浮遊する気体分子などにぶつかってしまえば、その粒子に速度を与えて自身は速度を失い、方向も変化しますので目的が達成できません。 圧力が高いということは、単位体積あたりの気体分子の数が多いということです。 ですので、圧力が低い方が、気体分子に衝突しないで飛行できる確率が高くなります。 というわけで、プロセスの圧力が決まります。→平均自由行程
他に圧力が高いと困る現象としては、試料の表面が酸化してしまったり、蒸発を妨げたりと、いくつかあります。
逆に、圧力を下げれば下げるほど、装置、電力そして時間が余計に必要になります。 たとえば、100 Pa という真空を得るには、ロータリーポンプだけで実現することが可能ですが、1 Pa 以下はオイルデフュージョンポンプ (油拡散ポンプ)、ターボ分子ポンプなどが必要になります。→真空ポンプの種類
ですので、工業的には様々な圧力で同じものが作れるならば、なるべく「低い真空度」すなわち高い圧力でのプロセスが採用されます。 そのためもあって、近年では大気圧下で実現できるプロセスが注目されています。→大気圧プラズマの基本技術