マイクロ波液中プラズマによる白金担持触媒製造
マイクロ波液中プラズマとは
マイクロ波 により、液中にプラズマを発生させる技術です。
液中のプラズマ発生は、気体中のそれよりも高いエネルギー密度を必要とします。
そのため、電力を一点に集中させ、液中電極に高い電界強度を作り出すなど、大気や真空中とは異なった構造が必要となります。
図1に装置の断面図を示します。上部の導波管から同軸導波管により同軸構造に変換し、液中に入れる電極先端をテーパー状に絞ることにより、マイクロ波を一点に集中し、液中に放射しプラズマを作ります。
液中に気泡が発生し、その気泡の中にプラズマが発生します。プラズマからの電子、光、イオン、ラジカルなどを液体に直接作用させることができます。
当社のマイクロ波液中プラズマ装置は、大気圧でプラズマ発生させることができる点も特徴の一つです。
実際に液中へプラズマを照射している様子は
液中プラズマ 関連動画 をご覧下さい。
装置を図2に示します。左側がマイクロ波発生部、これを右側のリアクターでプラズマ発生させます、事務デスク1つ分のコンパクトな形状で、液中プラズマ実験を行うことが出来ます。
図3は装置右側中央のプラズマ発生部分を拡大したもので、発光している液中プラズマを見ることができます。
反応容器は様々な形態に対応可能で、実験室ではポピュラーなビーカーを使うことも出来ます。
また、マイクロ波液中プラズマは、液体を選ばない、pHや導電率調整も不要など、最小限の材料と最適な溶媒だけでプロセス進行が目指せるメリットもあります。
溶媒は、純水、水溶液の他、アルコール、炭化水素、四塩化炭素などでもプラズマ発生を確認しています。
図1 マイクロ波液中プラズマの構造と効果/図2 マイクロ波液中プラズマ装置/図3 液中プラズマの拡大画像
マイクロ波液中プラズマによるナノ粒子製造
マイクロ波液中プラズマでは、2つの方法が可能です。
- 液中に溶かした金属塩を液中プラズマで還元し、ナノ粒子を得る。(金属イオン還元生成法)
化学反応では考えられないほど高速に反応が進行します。還元剤が不要なので、不純物を減らせます。
- 電極を目的物質で作成し、これを液中プラズマにより蒸発、液中で凝固させナノ粒子を得る。(電極金属蒸発生成法)
白金担持触媒は、いずれの方法でも作成することができます。
白金担持触媒の製造
電極金属蒸発生成法では、水溶液にカーボンブラックを混濁させることにより、ダイレクトに白金担持触媒を得ることが出来ます。
このようにして製造した白金担持触媒のTEM画像と白金担持したカーボンブラックを図5に示します。
この試料では、平均的な粒径は3~5nmとなっています。また、TEM像を詳細に検討すると、結晶化しており結晶面が出ていますので、高い触媒性能が期待できる結果となっています。
図4 白金担持触媒のTEM像(上)と作成した試料(下)(提供:北海道大学 米澤徹教授)
図5 金属イオン還元生成法により作成した銀ナノ粒子と金ナノ粒子(上)、金ナノ粒子製造中のマイクロ波液中プラズマ(下)
製造した白金担持触媒の性能
マイクロ波液中プラズマ法で製造した白金担持触媒を使い、燃料電池セルを組立てて性能評価を行いました。
図6にその結果を示します。わずかな試行回数でしたが、市販標準試料とほぼ同じ結果が得られています。
図6 燃料電池セルの電流電圧特性による評価
マイクロ波液中プラズマの様々な応用
金属イオン還元生成法による金、銀ナノ粒子の生成 (図5、参考文献2) は、還元剤を使うことなく進行させることができます。
硫酸銅からの銅あるいは酸化銅のナノ粒子生成 (図7)、透明電極に用いられる酸化亜鉛 (参考文献1) なども生成することが可能です。
また、発生する水素イオンにより酸性水を製造することが出来ます。
図7 酸化銅ナノ粒子製造中のマイクロ波液中プラズマ
申請特許(公開)および参考文献
- Tetsu Yonezawa, Atsushi Hyono, Susumu Sato, Osamu Ariyada,
“Preparation of Zinc Oxide Nanoparticles by Using Microwave -induced Plasma in Liquid” Chem. Lett. 2010, 39, 783-785
- Susumu Sato, Kunihiko Mori, Osamu Ariyada, Hyono Atsushi,
Tetsu Yonezawa, “Synthesis of nanoparticles of silver and platinum by microwave-induced plasma in liquid ” Surface and Coatings Technology, 206 (2011) 955–958
- 成島隆, 吉岡隆幸, 宮崎英機, 菅育正, 佐藤進, 米澤徹、”マイクロ波液中プラズマ法による銅微粒子の合成” 日本金属学会誌2012年4月号229-233
特許: (特願番号) 2008-298036、2009-32777、2009-210312、2009-210313、2011-41429。
備考
本研究開発は、北海道大学 米澤 徹 教授および菅製作所(北海道北斗市)と共同で行い、平成20年度エコイノベーション推進事業(NEDO)1件ならびに平成22~23、24年度戦略的基盤技術高度化支援事業2件を受託しました。
(委託および補助金受託事業一覧)
このうち、平成22~24年度戦略的基盤技術高度化支援事業で実施した内容に関しては、中小企業庁発行の事例集に掲載されています。
中小企業庁の当該ページ
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/senryaku/
平成22年度~23年度研究開発プロジェクト 研究開発成果事例集
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/senryaku/download/H22-23fyPj.pdf
(p9~11 プロジェクトリーダー 弊社開発部 佐藤に対するインタビュー記事,p294~295p事業の紹介)
関連情報
当社関連製品
大気圧プラズマ実験装置
当社関連ページ
液中プラズマ
大気圧プラズマの基本技術
マイクロ波Q&A
プラズマQ&A
委託および補助金受託事業一覧
特許一覧
サポイン事業:中小企業庁の「事例集」に掲載