ベーンを回転させて、ガスをかきだすようにして排気するポンプ。気密のために油を使います。
このポンプで排気できる限界は、0.1Pa 程度までで、それ以上の真空度が必要な場合は、他のポンプに切り換える必要があります。
0.1Pa までしか排気できない理由は、気密に使用する油の拡散と溶存ガスの蒸発によるものと考えられます。
ですから、排気限界で長時間排気すると、真空容器内は油の蒸気で満たされることになります。
ポンプを1日でも長くお使い頂くためには、使用環境や メンテナンス が重要です。ロータリーポンプを長く使う為の大前提 を参考にして頂ければと思います。
車のエンジンに付いているスーパーチャージャーやターボのように流速を上げるポンプです。 通常、ロータリーポンプなどの吸気口に付加して使います。
気密に油を使用していません。
油回転ポンプと比較すると高価、運転費が高い、大きい、騒音が大きいなどの欠点がありますが、反応性、腐食性ガス排気に適しており、半導体関連でよく使用されます。
オイルフリー型のスクロールポンプというのがあります。 ドライポンプに比べて、安価、軽量、コンパクトで、ロータリーポンプに代えて使われることが多くなってきました。 原理は、ロータリーエアコンのコンプレッサーのように、渦巻状の羽根を回転させて排気します。
この形式のポンプは、排気口にロータリーポンプなどの 低真空ポンプ を接続する必要があります。
このポンプは、1915 年にドイツの Wolfgang Gaede によって考案されました。
彼は回転ポンプ (1905年)、ターボ分子ポンプ (1913年) なども発明しています。(参考:岩波書店 理化学辞典 )
油を加熱しジェット流を作り、この流れを利用して排気するポンプです。
ポンプはヒーター、作動油、ジェット流を下向きに変える傘のような羽根で構成されています。
機構が簡単なため、排気量の割に安価ですし、メンテナンスや分解掃除もユーザーが行えます。
油を使うため油の成分が加熱により分解し、炭化水素が真空容器内にわずかですが拡散します。
この汚染を嫌う場合には使用できません。
また、このポンプで排気中に真空容器を大気にしてはいけません。
油の蒸気が容器内に充満し、容器全体が油まみれになります。以下にもう少し詳細に説明します。
油拡散ポンプ (Oil diffusion pump) 及び コールドトラップの構造を図1に示します。
油拡散ポンプは、内部を排気側に設置された低真空ポンプによって、排気してからヒーターを加熱します。
ヒーターによって加熱された油は蒸気となり、上へと上昇していきます。
内部は真空ですので、このときの蒸気の流速は、数100m/sec以上になるとされています。
この高速な蒸気ジェット流は、上部の傘により流れの向きを下向きに変えて、傘と円筒のすき間より噴射されます。
この下方向へのジェット流によって、高真空側の残留ガスを巻き込んで下方へ押し流し、
ポンプの上下に圧力差を生じさせ、高真空側を排気します。
下向きの油蒸気は、油拡散ポンプの水冷された外筒によって再び液体に戻ります。
このとき、ポンプ内部がある一定以上の圧力になっていますと、
ジェット流は残留ガス分子との衝突により速度が落ち、排気速度が急速に低下します。
高真空側が大気 (1気圧) に近い圧力になりますと、
蒸気はただの ”立ち昇る湯気” の状態となり、高真空側に配置された真空チャンバーへと立ち昇っていき、
チャンバーを油汚染させてしまいます。
なお、この状態で長く放置しますと、油が蒸発し、ヒーターが過熱し焼きつきを起こします。
このため、油拡散ポンプは動作圧力領域を指定どおりに厳守することが重要です。
また、ジェット流によって生じる上下の圧力差には限度がありますので、補助ポンプなしに使用することはできません。
油拡散ポンプは油蒸気のジェット流を使用しますので、
正常な使用状態であっても高真空側への油蒸気の拡散が多少あります。
また、熱分解された油の粒子が同様に拡散します。
この拡散によるチャンバーの汚損を低減させるためには、熱分解を起こしにくい油を使用するとともに、
コールドトラップ (Cold Trap) や水冷バッフルを使用する方法があります。
コールドトラップは、油拡散ポンプと真空チャンバーの間に挿入します。
構造は、液体窒素で冷却した板の付いた筒のような構造をしています。ここで油蒸気を凝縮して捕捉します。
コールドトラップを配置しますと、真空チャンバー内部の残留ガスも凝縮しますので、
排気速度が上がり、真空チャンバーの真空度が向上します。
しかしながら、このコールドトラップは、油拡散ポンプの排気経路に対してはコンダクタンスを下げることになりますので、
冷却していない状態では邪魔になり、実効排気速度は低下します。
このような低温による気体の凝縮を利用した排気ポンプには、後述する クライオポンプ、ソープションポンプなどがあります。
ジェットエンジンのように内部でタービンを高速回転させて、排気するポンプです。
タービンは、数万 rpm という極めて高速で回転しています。
特徴は、ガスの種類による排気速度の変化が比較的少ないこと、クリーンな真空が得られることです。
以前は高価なこと、騒音があること、微小ながら振動があることが欠点でしたが、最近は大きく改善されています。
このポンプの使い方の留意点は、タービンに衝撃的な力が加わらないようにすることです。
異物が混入してタービンに噛みこんだりしますと、タービンの運動エネルギーが一気に開放されることになります。
ターボ分子ポンプの固定が不充分ですと、フランジ部のボルトがちぎれてポンプがコマのように部屋中を転げまわることになり、
死亡事故など重大な事故につながります。
ちぎれた回転翼が、容器を突き破り弾丸のように飛んでくる事故も過去ありました。死亡事故ではありませんが、開発担当者が後遺症が残る怪我をされたという事例は、製造企業から伺ったことがあります。
このような事故が起きたのは、1980年以前のことであろうと考えられます。
最近は容器に充分な強度を持たせていますので、このような事故は無いと思います。
使用においては、異物が入らないような取り付け方を選び、吸気口に金網を装着するなどします。
また、ポンプが作動したままチャンバーを急激に大気開放すると羽根が飛びあがり故障の原因となります。
ターボ分子ポンプへの異物混入については 真空の威力 のような大きな事故へと発展する場合もありますので、取扱に十分注意して下さい。
別の排気系で高真空にした後、さらに真空度を上げるために使います。 残留ガスを外部に排気することなく、ポンプ自身に溜めこんでいきます。 この型のポンプを使うポイントは、何が溜めこまれるかを考えておくことです。 クライオポンプでオゾンを排気すると、再生時に爆発を起こす事になります。
真空容器内にチタンを加熱して飛ばし、このチタンが残存ガスを吸着する作用で容器内の圧力を下げます。 通常10-4 Pa以下の真空度で使用します。原理上、高真空に引くまで別の排気系に頼る事になります。
残留ガスを磁場中の高電圧による放電でイオン化及び加速し、カソード (通常はチタン) に叩きつけて (スパッタリング) 活性面を作ります。
この活性面によるゲッター作用と、スパッタリング によるガス分子の捕捉で排気します。
完全オイルフリーで、10-9 Paの 超高真空 が得られます。
駆動部がないので、振動・騒音が全くありません。
温度を下げると気体は凝縮し、さらに温度を下げると液体あるいは固体に変化し、
結果的にチャンバー内の圧力が下がります。この原理を利用したポンプがクライオポンプです。
ヘリウムガスの膨張時の吸熱を利用して、液体ヘリウム温度 (4K) 近くまで温度を下げて、
気体をポンプ内部に吸着させます。吸着した物質は温度をあげれば気体に戻りますので、
メンテナンス時に溜めこんだ気体をこのような方法で吐き出させ再生作業を行います。
欠点は、水素、ヘリウムなど凝固点の低い気体の排気速度が低いことです。
使用上の注意点は、何が吸い込まれて内部に溜まるかを考えておくこと。
オゾンを溜めこんで再生させると、爆発を起こします。また、ヘリウムを圧縮するコンプレッサの規則正しい音がします。これを聞いていると眠くなるんですよね。