このページは、新たに電子開発した製品や開発中の情報をお届けするコーナーです。
アリオスは研究開発のための特注品が多いため、製品のほとんどが新規開発といっても過言ではないのです。その中には極めて限定された用途向けのものや、お客様の都合上、ご紹介できないものがあります。
ここでは、そうした製品以外の新規開発品の情報をお届けします。なお、開発途上のものもありますので、製品仕様は変更される可能性があることをご了承下さい。
2006年 MBE国際会議にて発表(1) RFプラズマ源 のRF入力、シャッター、ガス流量を制御し、いくつかのモードをシーケンシャルに切り替えることにより、高品質なⅢ族窒素化合物の生成を可能とする RFラジカル源のシステムです。
図1:AM変調 RFラジカル源システムのLBモードとHBモード
RFラジカル源は磁場の調整も可能で、成膜に最適なラジカルを生成します。RFラジカル源の電力制限は、シャッタータイミングに合わせた一般的なステップ駆動、台形をはじめとする各種波形駆動、ビーム電流など各種測定値からのフィードバックなど、多彩な制御モードが実現可能です。統合的な制御はパソコン上から行いますが、ユーザー側でプログラミング可能な環境を備え、先進的なプロセスにも対応可能なシステムとしました。
MBE による Ga窒化膜生成には、Gaセルと窒素ラジカル源を使う方法があります。
しかしながら、この 2つを同時に使うと空中で窒化物が形成され、それが基板に付着する形となり、アモルファス状態になることが報告されています。
基板で単結晶成長させるためには、まず基板に Ga層を形成し、それを窒化するという 2段階のプロセスが必要です。そのためGaセル、ラジカル源に出力の ON/OFF機構を取り付け、シーケンシャルに制御する機構が必要になります。
Gaセルの ON/OFFは、シャッターによって実現可能です。窒素ラジカル源はシャッターによる ON/OFFでは回り込みが発生するため、空中での窒化を防止することができません。
そこでアリオスは、同志社大学の大鉢教授との共同研究により、RFラジカル源の出力制限による成膜方法を新たに開発しました。
Gaの窒化は、主にN*ラジカルによって窒化することが確認されています。また、RFラジカル源の入力電力を減少させていくと、N*ラジカルがほとんど出ないモードに変化します。その様子を図1で示しました。
LBは暗い発光で窒化がほとんど進行しない運転状態、HBは明るい白光でN*ラジカルが多く出て Ga膜を窒化させるモードです。
プラズマの放電モードが明暗 2つに遷移する現象は、一般に"E-H mode transitoin"と呼ばれており(2)(3)、RF電力の強弱によって制御することが可能です。
(この図は、2006年 MBE国際会議で発表された図であり、同志社大学の大鉢教授にご提供頂きました。)
図2に運転サイクルを示します。Gaセルと RFラジカル源は、交互に一定の休止期間をおいて運転されます。ラジカル源は電力を強弱切り替えてそれぞれのモードを実現しています。ラジカル源の出力を放電の有無によって、すなわち RF電力の ON/OFFによって制御することも考えられますが、これは実際にはあまり良い方法ではありません。
RF放電は、絶縁破壊を起こすほど電力を印加しない場合が多く、結果的に放電は宇宙線や紫外線など偶発的あるいは外部的な要因によって開始されること、放電初期は状態が徐々に遷移し、プロセスに最適な状態になるまで時間がかかることなどがその理由です。
図2:運転サイクル
図3は全体のブロックダイアグラムです。
Gaセルシャッターと RFラジカル源は基本的に交互動作となります。全体のタイミングをコンピュータによって制御します。
RF出力は、コンピュータからの信号によって制御しており、ラジカル量一定、定電力などプロセスに合わせた運転が可能です。
図3:全体のブロックダイアグラム
図4はコンピュータの操作画面です。
Windows パソコン上で動作します。セルシャッターのタイミングは外部、内部いずれも可能です。
この画面上で目標となるラジカル量、照射時間、休止時間などを制御します。試運転用に完全なマニュアル運転も可能です。
また、Lab Viewで製作しますので、お客様側でのカスタマイズも比較的容易になっています。
図4:コンピュータの操作画面
本システムへの最適化設計を行いましたが、単体としても使用可能です。自動整合器(マッチングボックス)を小型化し、一体化させたことにより、取り扱い安定性ともに向上しています。
13.56MHz 0~500W 出力の RF電源です。IRFS-504 の駆動に最適です。
参考文献